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学びが育む、税務の現場でいきる力

中学での経験がその後の人生に大きく影響を与えているということを卒業生の話を聞くと強く感じます。
今回メッセージをいただいた高橋 花音(たかはし かのん)さんは、中学時代の教員からの「勉強ではなく、学習を」という言葉をきっかけに、様々な経験を経て、現在活躍されているお仕事の礎になっていることを感じます。
同志社中学校での学びから、現在の仕事に活きている力まで、お話を伺いました。


税務の現場で若手リーダーとして

私は現在、愛媛県の松山税務署で財務事務官として働いています。私の主な仕事は、納税者が申告した税の内容をチェックすることです。なお、必要に応じて、事業主の事業所や家を訪ねて、申告のもとになった書類などの内容を確認し、間違いがあれば正しい申告をするようお伝えしています。

また、現在は国税庁が納税者の利便性を向上させるため、スマートフォンで申告を行うこと(以下、「スマホ申告」という)を推進しています。このスマホ申告を推進するため、私は税務署においてスマホ申告の便利さをどのように伝えるべきか、どんなポスターだったら伝わりやすいのかなどを若手のリーダーとして考え提案しています。

より良い社会をつくるために選んだ道

中学生の頃から、人々の役に立ちたいという想いが強く、開発途上国での活動に深い関心を持っていました。当時抱いていた将来の夢は、青年海外協力隊に参加することでした。

私が国家公務員として歩む道を選んだきっかけは、2つの大きな出来事があります。まずは、大学3年生の夏、カンボジアのスタディーツアーに参加し、日本の税金で建設された橋を目の当たりにしたことです。次に、父の故郷である宮城県気仙沼市で、東日本大震災後に建設された巨大な防潮堤を見たことです。

これらの経験から、途上国の発展や震災の復興に、間接的にでも役に立つ仕事はないかと考えるようになりました。そして、行政を支える資金源である「税金」に関わる仕事が、その願いを叶える一つの選択であると気づきました。私にできることは限られていますが、より良い社会をつくる一人として誇りを持ちながら日々の職務に励んでいます。

「勉強ではなく、学習を」

同志社中学校で受けた最初の社会科の授業で、担当教員が「勉強ではなく、学習をしなさい」と伝えてくださった言葉が今でも私の心に残っています。「誰かに『強』いられて『勉』めるのではなく、自らが『学』びたいと思ったことを『習』いに行きなさい。学びに来てくれたら、全力でサポートするから」といった言葉でした。この言葉を聞いて、学びは自分で探し求めるものだと気づきました。

その後、私は様々な活動に対して積極的に参加しました。東日本大震災に関する自由研究や、国際交流活動、地元の電鉄駅を盛り上げるプロジェクトなど、多くの経験をしました。さらに、理科の授業で植物や岩石の標本を作ることや、街頭アンケートを取り、それを基にした課題提案を行うなど、友人と共に実践的な学びを深めたことは今でも鮮明に覚えています。

これらの経験は、私に大切な仲間との思い出とともに、現場から学びを得る重要性を教えてくれたと感じています。

震災への取り組みから人生の原動力を見出す

同志社中学校では、人に共感や理解をしてもらい協力を得てものづくりをする楽しさを学びました。
特に印象的な経験として、中学3年生の時に取り組んだ自由研究は、気仙沼市と京都市における震災に対する風化の進み具合を人々の心理から考察するものでした。
中学校のクラスメイトや、気仙沼市役所の方々にも協力していただき一つの研究を行いました。また、この研究方法を実現するため、副校長先生から数多のアドバイスとご協力をいただきました。決して、一方的に教えるのではなく、自立した「人」として対話してくださっていたように思います。

同志社高校2年生の時には、東日本大震災の風化が進む危機感があったため、震災の写真展を行いました。この写真展の開催にあたっても、友人たちが賛同し一緒に署名をしてくれたことで実現へといたりました。そして友人から「花音ちゃんが近くで震災のことを発信してくれなかったら、私も忘れていたよ。色んなことを教えてくれてありがとう」という言葉をもらった時は、想いが伝わってよかったと実感しました。

税務でのチャレンジ

中学校で培った「人に共感や理解を得るための対話力」は、現在の仕事を行う上で活かされていると感じます。

例えば、専門的な税の計算方法について、納税者の方々に合わせ噛み砕いた説明を行うときです。税務の仕事で大切なことは、納税者が税の役割や計算方法等を理解し、正しく納税することです。特に、私の部門では、確定申告に不安を感じる人たちに「実は簡単ですよ」と伝えることを大切にしています。広報ポスターの作成も、馴染みやすさやわかりやすさを高めるために提案しています。
また、税務調査での指摘や納税に対して、納税者から抵抗を受けることもありますが、毅然とした態度で丁寧に対応することで相手の理解を得られた際はやりがいを感じます。

新しい社会に向けて「学び」を探し求める日々

現在の抱負は、多角的な視点をもち柔軟に対応する人物になることです。デジタル化や国際化に伴い高度かつ複雑な経済取引が可能となっていることから、今までとは違う悪質な方法で税を逃れようとする者が出たり、正しい取引金額を把握しづらくなったりすることが予想できます。そうした新しい時代に適応するためには、多角的な視点での考察と柔軟な対応力が必要であると考えています。

多角的な視点での考察をするためには、基礎的な専門知識が必須です。そのため、税法や簿記の学習を日々行っています。

同志社中学校への期待

同志社中学校の魅力は、感性を刺激する授業や課題の提供が沢山あり、楽しみながら学ぶことができることです。それから、一人ひとりの個性を尊重する環境があることです。多彩な能力にあふれた同級生と出逢えたことは、生涯の宝物です。今でも、同級生の活躍を見ると刺激を受けます。
貴重な3年間の中で、同級生だけでなく大人たちも巻き込んで様々なことにチャレンジしてみてほしいです。そうした自身の感性に従って動いてみると、生涯消えることのない面白い思い出や自信を持てるようになるはずです。

こうした多様性を受け入れる環境がある同志社中学校で、志や夢を持った人たちがのびのびと育つことを心より願っています。同志社中学校には、新しい時代で柔軟に対応できるような人間を育む場所として、ますます発展し続けることを期待しています。