獣医師になるまでの軌跡と夢の病院への道
獣医師の加藤 寛也(かとう ひろや)さん。これまでの経験を活かして2024年春からは「大阪梅田ペットクリニック」として開業・独立される予定です。
そんな加藤さんの同志社中学校卒業から獣医師になるまでの道のりと、同志社時代に学んだこと、そして今に繋がっていることをお聞きしました。
これまでと、今のキャリア
私は、2006年3月に同志社中学校を卒業し、同志社高校に進学後、浪人1年を経て北里大学獣医学部獣医学科に入学しました。卒業後は動物病院で働き、犬や猫、フェレット、モルモット、ハムスター、ウサギなどのペットの診療に携わってきました。診察や検査を行い、病気の診断と治療を行っています。また、手術も行っており、避妊去勢手術からイボの切除、骨折、腫瘍の切除など、幅広い手術を行ってきました。
動物病院では基本的にすべての科の診療を行いますが、私はその中でも「眼科」に興味を持ち、、秋田県での在職中には眼科専門の動物病院に研修に行っていました。秋田退職後は兵庫県の動物医療センターで働き、幹細胞治療や腫瘍の放射線治療の経験もしました。
来春には自身の病院を大阪で開業する予定です。ペットと飼い主の幸せを第一に考え、寄り添いを大切にする病院を目指しています。
獣医師を目指した理由とは?
獣医師になりたいという思いは、中学1年生の頃には持っていました。実際、中学2年生の時に作ったクラス文集では将来の夢のところに「獣医」と書いていました。
しかし、小学校の頃から野球に打ち込んでいたので、高校生になったころはまだ本気で獣医師になろうとは思っていませんでした。高校3年生の10月、進路を決めるときに同級生とたまたま話をしていました。その同級生が医学部にチャレンジする!と言っていたのを聞いて、自分も獣医師になりたいという夢を思い出し、一念発起しチャレンジすることにしました。
私が獣医師を目指した理由には、幼少期から一緒に過ごした愛犬の影響が大きかったと思います。
私は一人っ子で、私と愛犬は兄弟のように育ちました。その犬が高校1年の時に亡くなり、その時に診てくださっていた獣医師の先生の人柄や仕事ぶりに大きな憧れを抱いたのを覚えています。
仕事のやりがいと魅力
元気のなかった動物が元気になっていくことは、本当に素晴らしいやりがいを感じます。
しかしながら、私にとって最も喜びを感じる瞬間というのは、一生懸命に治療を施しても亡くなってしまった動物の飼い主さんが、時間が経って新しいペットを連れてきてくれて「また先生に診てもらいたい」と言ってくださることです。 生き物相手ですので、どうしても助けることが難しい場合もあります。 しかし、そんなときに連れてきてくださったら、「自分の診療は間違っていなかったのだな」と救われる思いになります。
この仕事の魅力・面白さに関して言えば、まさに「答えがない」ということや、「どんなに突き詰めても終わりがない」ということですね。
同じ病気であっても、個体やそのご家庭によって治療方針は異なってきます。 Aさんにとってはこの治療方針が正しいかもしれませんが、Bさんにとっては違う方法が良いということもよくあります。 難しい部分もありますが、私はそこに魅力を感じます。
また、獣医学は常に進歩しています。 以前は正しいとされていた治療法すら、今では完全に否定されているものもあります。 突き詰めれば突き詰めるほど、新たな疑問が湧き出たり、新しい知識や技術を身につけなければなりません。 終わりがないことは大変ですが、自分自身の知的好奇心がどんどん湧いてきて、「学び続けなければいけない」ところにも魅力を感じます。
そして私は常に飼い主さんの話を真剣に聞くこと、共感すること、寄り添うことを心がけています。 動物の声のない声を聴くためには、まずは飼い主さんの声にじっくりと耳を傾ける必要があると思っています。
同志社中学校で過ごした思い出
授業では理科が好きでした。「カエルの解剖」や「植物標本づくり」、「岩石標本づくり」などが印象に残っています。実際に触れたり、見たりして五感を使って学ぶことができたと思います。
学校行事では特に「学園祭」のクラス演劇が一番印象深いです。京都会館という素晴らしい舞台で発表することができたのは貴重な経験だと思います。また、3年生の時には生徒会執行委員の文化委員長を務めていましたが、その時の学園祭は「自分たちの手で作り上げた」という大きな達成感を感じ、感動したことを思い出します。
クラブ活動では野球部に所属していました。3年生の時にはキャプテンも務めました。目立った成績は残せませんでしたが、チームをまとめる難しさを感じました。特に当時は部員の人数も多く、キャプテンとして異学年の仲間たちをまとめるきることができず悔しかったことを覚えます。ただそれが、今となってはいい経験であったとも感じています。
体験を通じて学ぶ魅力!
同志社中学校では、「百聞は一見に如かず」ということや「いろんなことに興味を持ち続ける」ということを学びました。
特に、同志社中学校時代の「カエルの解剖」や「標本作り」の授業は、私にとって非常に心に残るものでした。
(今出川に中学校があった)当時は御所(京都御苑)に出かけて季節の草花や木々を観察した経験もありました。このように、実際に触れて体験することが大切であることを学んだことを今でも鮮明に思い出せます。
同志社中学校ではユニークな先生方や授業がありました。理科のカエルの解剖や標本作りだけでなく、数学の授業ではトランプを使って正負の数を学んだり、折り紙で多面体を作ったり、社会(経済)の授業では株式の取引シミュレーションを体験するなど、他の学校ではできないような授業を受けることができました。
このような素晴らしい環境の中で、「興味を持ち続けること」がどれだけ面白く、自分の世界を広げてくれるかということを、身をもって学びました。
仕事の場面でも、どれほど教科書を読んでも、人に教わっても、自分で体験しないと身につかないことがたくさんあることを、日々の診療や手術で実感します。特に手術に関しては、同じ手術でも動物の体格や品種によって違いがあるため、教科書を読むだけでは足りません。しっかりと実践することで本当に身につくことを実感し、「百聞は一見に如かず」という言葉を常に心に留めています。
また、「興味を持ち続けること」は仕事だけでなく日常生活にも根付いています(妻からは「好奇心オバケ」と呼ばれていますが笑)。去年は急に法律に興味を持ち、民法や行政法、商法の本を多く読みました。最近では心理学に興味を持ち、さまざまな本を読もうとしています。さまざまなことに興味を持ち、知識を得ていくことは、自分の世界を大きく広げることにつながります。
そして、その興味がいつか人生の中で意味を持つこともあります。私は高校3年生の時に簿記3級を取得しました。当時は単なる興味本位で受けたものでしたが、なんと今年、動物病院を開業する際に経理の仕事をしなければならなくなりました。15年もの歳月を経て、簿記の知識が役立つ時がやってきたのです。ただの興味が自分の仕事に役立つなんて、驚きです!
目指す理想の動物病院
私は、真にペットと飼い主さんの心に寄り添った動物病院を作っていきたいと思っています。 獣医師の仕事とは、動物病院は動物の病気を治すのももちろん大切ですが、同時に飼い主さんの心を癒すのも大切な役目であると思っています。
獣医師であると同時に、時には友人のように、時には心理カウンセラーのように接し、ひとりでも多くの人に「先生に診てもらって良かった」と言ってもらえるようにしていきたいです。 そしていつかは「プロフェッショナル」に出演したいですね!
現在、ペットの飼い主さんが抱える悩みや不安を受け止めるグリーフケアというものを学んでいて、ゆくゆくは心理カウンセラーの勉強もしようと思っています。
「これからの同志社中学校教育に求めるもの」は?
同志社中学校には魅力的な先生方と授業がたくさんです。もちろんそのすべてに興味を持つことは難しいでしょう。 しかし同志社中学校ではそれを否定することはありません。 興味の持てなかったことは否定せず、興味のあることを大きく伸ばしてくれる、同志社中学校はそんな素晴らしい学校です。
新型コロナウイルスの広がりにより、社会は大きく変化しました。もちろん、その中で良い変化もあったと思います。しかし、人との関わり方においては、どうしても悪い方向に変化したと感じています。私は同志社中学校が変わらずこのままであってほしいと願っています。先生と生徒との関わり方、生徒同士の関わり方は、今まで通りの同志社中学校であってほしいです!